松岡圭祐氏の文庫最新刊です。
松岡圭祐氏といえば、「催眠」「千里眼」シリーズでも文庫化に当たって大幅な加筆修正をすることで有名ですが、本書については加筆修正などとは呼べないくらいに新たな筆が入っています。松岡氏は、本作の前書きで、親本「水の通う回路」、徳間書店文庫化「バグ」ともに不完全だったと認めています。ミステリーというジャンルに近づけるよう編集者に迫られた結果、このような形になったようです。そして、今回の文庫化にあたり、本来書きたかった形に戻すと同時に、ゲーム業界やコンピュータ業界の記述を現在のものに書き直したということのようです。結果として、松岡氏が出したかった形で今ようやく店頭に並んだというわけです。

さて、感想ですが、これは、まさしく松岡圭祐ワールドです。「千里眼」「催眠」シリーズと同じ感性です。
最新ゲーム発売と同時に少年達の自傷事件が全国で勃発。被害者が見た「黒いコートの男」とは誰か。ゲーム会社社長の桐生は、会社の存続と子供達の未来のために、事件の真相を追うことに・・・。
集団、心理、不可思議、業界、国家規模、人生という松岡氏の世界観が如実に現れています。
「千里眼」のように派手でもなく「催眠」のようにしっかりとした基盤もないですが、変わらぬリーダビリティを備えた筆力は圧巻です。多少、人や生きることについての抽象論的表現が目立ち、その曖昧さゆえに氏の他作品に比べると若干終盤が弱い気はします。

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